金沢箔、金箔・銀箔フィニッシュ

2008年フィニッシュシリーズを発売した当初より、「金箔フィニッシュ」という極薄で伸びる粘着シートは考えていました。実際、金箔に似せた試作品も作り、参考出品に対するお客様の反応も良かったのですが・・何だかピンと来るものがなく、お蔵入りとなっていたのです。

その後、ミラーフィニッシュよりも価格の高いカーボン系フィニッシュや、さらに高額となったホログラムフィニッシュも売れ行きが好調でしたので、もしかすると本物の「金箔」でも買っていただけるのではないか、お客様が求めているのは、本物の金箔!・・と考えたのが2010年春のことです。

さっそく金沢の金箔メーカーにコンタクトを取り、こちらの要望を伝えましたが、やはり極薄で伸びるベースフィルムはありません。そこで、フィニッシュシリーズの透明フィルムを提供すると直ぐに試作品が上がってきました。よく言われるのが、金箔を伸ばすとひびが入るのではないか?と思われがちですが心配いりません、金は延び特性に優れているのです。その職人技、金という金属の持つ力に圧倒され、しかも「銀箔もできます」ということで、その後はとんとん拍子・・とはなかなか行きませんが、5月のホビーショーに参考出品し、金箔・銀箔ともに発売が決定しました。

今回は夏真っ盛りの金沢市で、金箔メーカーさんが金沢箔の製造工程順に生産現場の撮影と取材をセッティングしていただき、金沢箔の伝統工芸士さんともお話してきました。

金沢駅前は洗練されたデザインがなされ、巨大な木造のオブジェ?いや門が立っています。 

駅で金箔メーカーさんと合流し、さっそく最初の取材先「上澄屋」を案内していただきましたが、箔製造工程のほとんどが、一般家庭で行われている、ということに大変驚きました。

上澄屋(うわずみや)の仕事。 

金箔は金の地金をいきなり叩いて箔にするのではなく、炉で金合金を作ることからはじまります。

金合金を帯状に延ばしたものを、台切りで約6cm角の小片に切ります。

約6cm角の切った荒金を打ち伸ばして行きます。打った直ぐの上澄は触るとまだ熱いです。

約6cm角の上澄を打ち延ばし、切ってまた打ち延ばしを繰り返します。

21cm角まで打ち延ばされた上澄を触らせていただきました。上澄の厚みは約千分の3mmで、これを11~12mm角に切り、箔職人へと渡ります。

石川県箔商工業協同組合

明治21年に有志同業組合を結成。 金沢箔の歴史がここに来れば全てわかります。

金箔は空かしてみると、なんとブルーに見えるのです・・TF906と同じ金箔4号色。

石川県箔商工業協同組合が定める製品には、当時使われていた金槌のロゴマークが入ります。

金沢箔 伝統工芸士

巨大な打箔機に向かい、経験と勘を頼りに金箔を打ち続ける箔職人の佐野さん。

一万分の1mmまで打ち延ばした箔を広げ確認。満足したご様子です。

現在はカーボン加工された打箔用の和紙を使用しています。国産最高級のかんぴを使った和紙をすく職人がもういないということで、箔打ち職人もさることながら、400年続く金沢箔の伝統を守ることはそう容易くはありません。

打ち上がった箔を竹箸を使って一枚一枚移していきます。 これは奥様の仕事で分業です。金箔は一万分の1mmまで打ち延ばします。できた隙間などは、写真右側の小さく刻んだ金箔を「継ぎ当て」という技法で補います。金箔フィニッシュは、金箔を2枚使用しています。継ぎ当てや中間に線が見えるのは、本物の「金箔の証」でもあります。

伝統的工芸材料 金沢箔

通商産業大臣認定と書かれた盾や認定証と、金沢市からの表彰状が飾られていました。

あらためてご紹介します。 伝統工芸士 佐野 一彦 さんです。

昭和27年より金沢箔職人としての仕事に従事し、平成6年に伝統工芸士に認定されました。

祖父が初代で、佐野一彦さんが三代目の箔職人です。佐野さんが始めた昭和27年頃は、打箔機が並ぶ仕事場に職人が通ってきて、多くの先輩職人から技術をぬすみました。今は各職人が自宅で箔を打つので、子供が箔職人となっても自分の技術しか受け継げない。私のような箔職人はもう現れないでしょうと言っておられました。

写真は左から日本初の打箔機、右は箔移しの作業現場、上が佐野さんの箔で施工したお寺。

数年前に奈良のお寺から、内装を改修をするので佐野さんの金箔を使いたいと、名指しで依頼があったそうです。箔は職人により「顔」が違う、と佐野さんはいいます。金箔は一枚一枚、金属の表情が違い、さらに各職人によって顔が違うそうです。

お寺の施工主より、全ての金箔押しが完成したので見に来てくださいと案内があり、奈良まで見に行かれたそうです。真新しい金箔の柱や壁、襖を見た佐野さんは、その時は何だかしっくりこなかったといいます。それから一年経過し、翌年あらためてお寺を見に行き、金箔の仏間を前にして・・「これだ!」と、これが私が思い描いていた「箔」だと思ったといいます。

日本の四季を過ぎ、一年経った金箔が、柱や壁、襖に馴染み、落ち着いたのだろうと、佐野さんはいっておられました。それが「金箔」という金属が醸し出す、風合いという物なのでしょうか。

箔押し

金沢箔業界では、箔を物に施工することを「箔押し」といいます。

金箔・銀箔フィニッシュ最後の行程は、曲面追従シートに金箔・銀箔を箔押しすることです。

伝統工芸士の佐野さんのお宅でもそうでしたが、箔を打つ職人は男性で、箔を移す作業は女性の方が作業的に向いている仕事のようです。金箔・銀箔フィニッシュは、贅沢に2枚の箔を使用し、特殊な接着材を塗布した上に、長年の経験を持つ箔押し職人によって、一枚一枚手加工で作られていきます。

金沢箔には金箔、銀箔の他に、プラチナ箔、アルミ箔があり、金箔と同じ製法で作られます。

10月13日からのホビーショーでは、飾り金物の他に、銀箔をあしらった九谷焼の茶碗、作例として、金箔、銀箔、そしてパールフィニッシュを施工した「装飾ギター」を展示します。そして一般公開日の二日間、金箔、銀箔フィニッシュを会場限定で先行販売します。大変高価なフィニッシュですので、少数ですが(おまけ付)となりますので楽しみに。

取材協力:伝統的工芸材料 金沢箔 伝統工芸士 佐野 一彦

※TF906金箔フィニッシュは、佐野一彦さんの打つ金箔を使用しています。

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