世界初の実用V/STOL攻撃機として
1960年はじめに登場したハリアーは、
上陸支援戦闘機としてアメリカ海兵隊に注目され、
AV-8Aの名称で採用されました。
しかし、ペイロードと航続距離不足による運用上の問題はなかなか解消されず、
AV-8Aの発達型が長らく求められていました。
そのような状況下に登場したAV-8Bはアメリカ海兵隊の戦術要求を満たすべく
大幅の能力向上が図られていました。
主翼は大型化され、断面がスーパークリティカル翼形となり、
主翼付け根部分にLERX(前縁延長)が設けられて空力的に改善されました。
しかも複合材の多用により、重量は最小限に抑えられ、
また、翼下の補助車輪は翼端から主翼中央部に移動し、
翼下ハードポイントが2カ所増えました。
一方、アビオニクスにも大幅な近代化が図られ、
機首にはA-4Mスカイホークで実用化されたARBS(角速度爆撃システム)が装備され、
兵装投下精度が格段に向上し、さらに、
多目的ディスプレーとHOTAS方式(操縦桿やスロットルから
手を離さないで各種システムを操作できる)の採用に加え、
キャノピーが大型化され、広い視界を得て操縦性も高められました。
他に、空気取り入れ口の改良や前排気ノズルに
ゼロ・スカーフ・ノズルを採用して推力効率を高め、
VTOL時には新たに設けられた引き込み式の前方フェンスと
大型化した従来からの取り外し式ストレーキの、
これら揚力改善装置(LIDS…Lift Improvement Devices)により、
地面反射ジェット揚力を有効に利用できるようになりました。
また、空中受油装置は引き込み式の受油プローブを備えています。
最初の実戦部隊配備は1985年VMA-331に対しておこなわれました。
《データ AV-8B HARRIER II 》
乗員:1名
全幅:9.25m
全長:14.12m
全高:3.56m
エンジン:ペガサスR.R. F-402-RR-408×1(推力10,795kgx1)
最大離陸重量:14,515kg(STOL時)
最大速度:1,080km/h
初飛行:1978年9月6日(原型)